ガウス過程に基づく確率的生成モデルを用いたマルチモーダル情報に基づく連続的な記号の創発

劉智優, 江原広人, 中村友昭, 谷口彰, 谷口忠大

Abstract: 記号システムはエージェントが他者や環境と相互作用しながら集団の中でボトムアップに創発する.この記号創発現象のメカニズムを明らかにするために,構成論的研究が進められている.その一つとして,記号創発現象を集団的な潜在変数の推論と捉えた,集合的予測符号化仮説に基づく確率的生成モデルが提案されている.このモデルでは,分散的ベイズ推論によって,2 体のエージェント間で共有された離散的な記号が創発されることを示した.ただし,このモデルでは記号を離散的な変数としてモデル化しているが,記号は必ずしも離散的なものに限定されるものではない.例えば,言語は離散的なテキスト列だと簡略化され捉えられがちであるが,人類は音声という連続的なメディアを通して言語を発達させている.この意味で連続的な記号メディアの創発の構成論を議論することは,離散的な記号の構成論を補う形でも重要である.そこで本稿では,ロボットが取得するマルチモーダルな情報から,連続的な記号の創発が可能な確率的生成モデルを提案する.観測の生成モデルにガウス過程を利用することで,マルチモーダルな観測から連続的な記号を創発することが可能である.実験では,マルチモーダルな観測から記号が創発されること,さらに創発された記号が正しくエージェント間で共有されていることを示す.